ヒーリングとは何か?
著者:加藤優(2012年6月5日著)
本ページでは、私(加藤)の提供するヒーリングの背景として、私の人間観、健康観などを述べさせていただきます。
健康な状態とは何か?不健康な状態とは何か?
我々は通常、何か顕著な異常、例えば、ひどい頭痛、腹痛、出血、湿疹、食欲の喪失、痙攣、パニックアタック、学校に行こうとすると嘔吐してしまう、歯軋りがひどく、あごが緊張して夜眠れない、等が無い限り、自分自身の心身の健康状態について気にすることはありません。我々の多くは、上で挙げたような障害が無い状態が健康な状態であり、障害が存在する状態が不健康な状態であると考えています。「障害の不在=健康」、「障害の存在=不健康」、だと考えています。ですから、何がしかの障害があなたを襲ったとき、あなたは、その障害を何がしかの方法で取り除くことで、健康を取り戻すことができると信じています。この認識は間違いです。障害を取り除こうとすること自体は、誤りではありません。もし、ひどい頭痛に襲われたのであれば、誰しも、私(加藤)ですら、その頭痛を取り除きたいと思います。ここで、私が強調しているのは、何がしかの不具合・痛み・障害を取り除くことで、健康を取り戻すことができる、と考えるのは間違いだということです。
そもそもは、あなたは不健康な状態(心身のバランスを失った状態:詳細は後述します)であるからこそ、あなたは障害(例:頭痛)に襲われたのであります。その症状を取り除いても、あなたが依然として不健康な状態であるのには変わりがありません。
是非、念頭において欲しいのですが、あなたが何がしかの病気にかかったとして、その症状の緩和のみに気をとられ、症状をなくすことのみを「治療」と考えるのであれば、それは的外れです。例えば、あなたが胃がんにかかったとしましょう。西洋医学的に癌を除去することに成功したとします。その後、再発もないので、あなたには癌を克服したかのように思えます。しかし、このとき、あなたは、癌という病気が、実は氷山の一角でしか過ぎず、その癌をあなたにもたらした背景を見過ごしています。
癌とは、あなたが極度の緊張にあるために、細胞達自身、細胞をとりまく組織が萎縮してしまったために、細胞同士が協調行動をするために必要な電気的信号、酵素による信号が共有できなくなったことが、根本原因です。それぞれの細胞が、周囲と調和するための「どう行動し、いつ死んで、いつ再生するか」という情報を、共有出来なくなってしまったのです。とある組織が周囲の組織との協調関係から分断され、その孤立化した部分が、自分がどう振舞えばいいかが分からなくなり、異常増殖をはじめたのが、癌という病気です。その異常増殖を起こした組織のみを摘出したところで、それを生み出した下地は残ります。あなたは依然として、緊張状態にあるのです。あなたは、不健康でバランスを欠いていたから癌になったのであって、健康を取り戻すことなく、その症状である腫瘍を摘出したところで、あなたは、仮に癌を再発させることが無かったとしても、他の病気をいずれ発症し、心地よい快適な状態になることなく、人生を終えることになります。
それでは、そもそも健康な状態とはどういう状態なのでしょうか?健康を失っている状態というのは、どんな状態なのでしょうか?不健康な状態のほうが、理解しやすいので、まずは、不健康な状態を説明し、その後に、健康な状態を解説します。
あなたを困らせていることが、それが肉体的であれ(例:癌、糖尿病、白内障、感染症、頭痛)、それが精神的であれ(例:鬱、パニックアタック、不眠)、その原因の根は一つです。全てに共通する根本原因は、心身が緊張したために、心身が健全な活動をするのに必要な、生体エネルギー(中国医学の「気」に相当)や必要物質(水分、酸素、栄養素、血液、体液、酵素等)や情報(神経系を通る電気的信号)の流通が妨げられることにあります。
肉体的な緊張がどれほど深刻なのかは、多くの方にはご理解いただいていません。あなたが、何がしかの不安や恐怖をいだいたとき(例:明日の仕事の面接が不安)、身体の結合組織は、3センチ四方あたり最大で約1トンの過重がかかったに等しいほどに、萎縮します。結合組織とは、コラーゲンでできた組織で、細胞、臓器、骨、血管を包み、身体の形状を保つために、頭の先からつま先まで、メッシュのネットのように全身に張り巡らされています。この結合組織は、頭蓋骨の中も行き渡っていますので(脳細胞や脳血管は、その結合組織の網の目を縫うように存在します)、あなたが不安で緊張したとき、あなたは文字通り、脳みそを押しつぶしているのです。緊張が恒常化してしまえば、緊張が神経系に壊滅的ダメージを与えるのは言うまでもありません。また、結合組織は全身に行き渡っていますので、不安を感じたときは、全身が萎縮します。そして更に、緊張した肉体の部分においては、細胞と細胞の間のスペースがつぶされて無くなってしまいますので、必要物資、エネルギー、神経信号が正しく流通できなくなります。周囲の組織と、情報を共有することが出来なくなり、やがて孤立します。このとき、緊張し孤立した部分は、あなたのもつ生き物としての自然治癒力からも分断されてしまいますので、その孤立した部分で障害が発生していきます。癌などは、その最たる例です。
これは、肉体的な病気だけでなく、精神的な病気でもいえることです。健康な精神状態は「開かれており」、感情や、考えや、エネルギーが自然に流れていきます。健康な精神状態は柔軟性に富んでいます。ショッキングな事件があなたを襲っても、あなたの健全な精神はそれを簡単に受け流すことができます。不健康な精神状態とは、精神構造の中で、極度に緊張した部分が発生し、その部分が周囲から孤立したために、そのことで、あなたの精神性が全体としての調和を失ってしまった状態です。このとき、あなたの精神は柔軟性を失っていますので、ショッキングな事態があれば、あなたは立ち直れないほどに、打ちひしがれます。やがて、病気(例:鬱)を発症するまでに至ります。
緊張が病気を生んでいるのであり、この意味で、英語において病気を「disease」と呼ぶのは、とても的を得ています。「Dis-ease」(安らげない状態)と記して、病気を意味する。「安らげない」結果として、あなたは何がしかの心身の障害を得ているのです。ですから、あなたは、「安らげる」状態を目指すべきであり、それをせずに、ただ症状が無くなることだけを目指すのであれば、繰り返しますが、それは的外れです。
なぜ、「安らげない」のでしょう?それは、あなたが不安や恐怖を無意識に感じているのです。あなたは柄も言われない不安を抱えているのです。何がしかの精神的トラウマが、その不安をあなたに植え付けたのかもしれません。上で、ありとあらゆる疾病の根本原因は、緊張にあると述べております。しかし、更にいえば、その緊張をもたらしている潜在意識下の不安と恐怖こそが、究極的な根本原因であると申し上げてもいいでしょう。
健康な状態とは、あなたは心の底から安心していて、ほがらかであり、何かにおびえたりすることが無いために、あなたの心身のシステムが、柔らかく、リラックスし、ソフトで、伸び伸びとしており、開け放たれている状態です。このとき、あなたの心身が必要とする、血液、体液、酸素、酵素、栄養素、老廃物、生体エネルギー、神経系電気信号、等が、制限を受けることなく、円滑に流通します。あなたという一人の人間がもつ「いのち」の本源的力と可能性が、それ自身を余すことなく発揮させます。このとき、あなたは、あなたの神秘的な全体性、全人格性と調和にあり、あなたの自然治癒力が常にあなたを守ります。常に、エネルギーを受け取り、ヴァイタリティーにあふれます。インスピレーションにあふれ、頭脳が明晰になり、あなたの日々の行動で、迷いが無くなっていきます。この状態になると、更にあなたは安心を深め、心身がより柔和になり、エネルギーの流通がより円滑になる、という好循環を起こしていきます。これが健康な状態です。
健康な状態とは何か?不健康な状態とは何か?この議論をまとめると、次のようになります。健康:心底安心しており、心が穏やかで満たされているために、心身が柔和で、開かれている状態。不健康:心は何がしかの恐怖や不安におびえている、そのために、心身が緊張・萎縮・硬直している状態。
健康:安心と開放、不健康:不安と硬直、この両者のコントラストは、正常細胞と癌化した細胞を比べると一目瞭然です。
下写真は、大腸壁の正常な細胞とガン化した細胞の比較です。左側が正常な大腸壁の細胞で、隙間があり、スペースに余裕があります。右側の黒ずんだ部分が大腸がんです。個々の細胞がつぶさるかのように圧縮されています。
下の二つの写真は、腎臓の正常な細胞とガン化した細胞の比較です。上でみた大腸の細胞と同様に、左下側、正常な腎臓の細胞には、スペースにゆとりがあるのに対し、右下の写真のガン化した細胞は、凝縮され圧迫され、ゆとりがありません。
もう一度繰り返します、健康とは「安心と開放」の状態であり、不健康とは「不安と硬直」の状態であります。安らいでゆとりのある状態が健康な状態であり、安らげずに緊張した状態が不健康な状態です。
ヒーリングとは一体何か?
ヒーリングとは、上で言うところの「健康な状態」を得ることです。「Dis-ease (安らげない)」状態ではなく、「Ease(安らげる)」状態にあることです。「安らいだ」状態では、あなたの精神と肉体を締め付ける力が存在しません。これは、喩えれば、あなたの視界をさえぎるものが何もない、あなたの眼下に360度広がる大自然の絶景、あなたがその絶景を見ているときの開放感を想像してみてください。あなたの精神と肉体がその開放感を楽しんでいるような状態です。制限する力が不在で、あなたの心身は開け放たれています。このとき、あなたの「いのち」が自由にその営みを表現し始めます。あなたの自身の存在の奥にある、生命力、潜在能力、自然治癒力が開花します。自分が大きく力強く感じられ、深い幸せと平和を感じます。あなたをそんな状態にさせるのが、ヒーリングです。ヒーリングとは、あなたが「安らげる」ようにすることを目的としているといえます。
ここで、私が言うところの「安らいだ」状態について説明します。私が言う「安らいだ」状態とは、一時的な緊張の緩和を意味しません。ですから、例えば、一週間仕事をして、金曜の晩、仕事を終えた後に、一杯、ビールを飲んで、「プフー、仕事の後にビール最高」と、その瞬間のプレッシャーから解放された状態を指しているのではありません。「安らいだ」状態とは、あなたの心身が、緊張する必要性を微塵も感じていない状態です。
多くの方にとって、「安らぐ」のはとても難しいことです。例えば、あなたはマッサージなどを受けて、一時的に身体がラクになるのを経験したことがあるはずです。しかし、マッサージだけでは、緊張の奥の恐怖を解消できません。数日後、あなたはまた緊張状態にもどります。私が言う、「安らいだ」状態とは、そもそも身体が緊張せずに、常に柔らかで柔軟性に富み、もう何十年もの間、マッサージに行こうという発想すら浮かばないような、そんな長期間リラックスできている状態を意味しています。
これを言うと、意外に感じられるかもしれませんが、人間にとっては、実はこのレベルで「安らいだ」状態が自然な状態です。身体にとっては、「コリ」などなく、のびのびとしている状態が、本来あるべき自然な状態です。心にとっては、「あれをしなきゃ」「これをしなきゃ」という追い込まれた感覚がなく、何の考えも浮かばず、凪をうったようにただただ静かであるのが、本来の自然な心の姿です。
ですから、ヒーリングとは、あなたの心身が、本来の自然な状態に戻るのを促すことであるとも表現できます。
では、そもそも、なぜ、あなたは、その自然な状態から逸脱してしまったのでしょうか?それは究極的には、あなたが、本当の自分を知らないからなのです。本当の自分とは力強い存在であるのにも関わらず、その本当の自分の姿を知らないから、自分がひ弱で、脆弱で、小さく感じられてしまいます。このとき、精神の奥にある恐怖に、あなたは知らず、知らずの内に揺り動かされてしまうのです。そして、あなたの精神の中では、防衛本能が働き、身体は硬直し、何かをして自分を守らなければと四六時中「自分はどうしたらいいか」と思案にくれることになります。
あなたは、実は、本当の自分を知らないのです。ここで、自問自答してみてください。「私は、一体何者か?」。あなたは、名前をもっていますが、「名前=あなた」ではない。あなたは、職業をもっているが、「仕事=あなた」ではない。あなたは、家庭での役割(例:妻、母親)をもっているが、「役割=あなた」ではない。あなたは、趣味をもっているが、「趣味=あなた」ではない。あなたは身体をもっているが、「身体=あなた」ではない。あなたは思考をもっているが、「思考=あなた」ではない。あなたは感情をもっているが、「感情=あなた」ではない。それでは、あなたとは一体なんなのか?あなたの中で、その答えが見つからないはずです。あなたは、あなたという存在の全体性を失っているのです。
本当のあなたとは、上であげた全てのものを所有している、言葉では表現できない、何か大きな存在なのです。いつしか、あなたはあなたの存在の大きさを忘れてしまったために、あなたは自分が矮小であるように感じ、「ひ弱な自分はいつか駆逐されてしまう」という恐怖に揺り動かされて、緊張し萎縮した状態になってしまっているのです。
ですから、ヒーリングとは、本当の自分を知り、自分の奥にある「いのち」の力を感じることで、不安や恐怖を超越することであるといえます。ヒーリングとは、本当の自分とのめぐりあいなのです。本当の自分を知ることで、あなたは「安らぎ」を得るのです。
ここで、ヒーリングのバイブルとも言える、バーバラ・アン・ブレナンの名著、Hands of Light(邦訳;「光の手」)から、彼女の言葉を紹介しましょう。
Healing is opening the doors of perception so that
one can enter into the Holy of Holies. Enlightenment
is the goal. Healing is a by-product.
- Barbara Ann Brennan
加藤による意訳:ヒーリングとは、あなたが「知覚のドアを開く(open the doors of perception)」すなわち、禅でいうところの、既知なるものを全て捨てて全く新しい考えを受け入れられる状態になること、善も悪も全てを受けいれらる状態になることで、あなたは、最も神聖なる状態へと移行していく。悟りの状態(enlightenment)があなたの目標である。あなたは、悟りを開く過程を通じ、その過程の副次効果として、あなたは癒されるのだ。
バーバラ・アン・ブレナン
私は2004年に上記の言葉に触れて、衝撃を受けました。当時、彼女の言葉は完全に理解しているとは言い難かったのですが、直感的に彼女の言葉が正しいことは分かりました。その後、自分自身が精神の覚醒を経験して、統一意識(最高の意識状態)を体験した結果として、自分自身の心身の状態が改善され、心身共に健康になっていったのを実際に経験しました。彼女の言葉は、今、私の血となり肉となり、完全に私の中では、府に落ちるものになっています。
なぜ、悟りの副次効果がヒーリングになるのでしょう?その全容を言葉で表現するのは、困難なのですが、私はあえて次のように要約します。もし、あなたが何か閉塞した状態にある、気分は落ち込み、身体もだるく、病気がちである、というような状態にあるのだとしら、その状態のみに着目し、その状態のみを捨象しようと努力しても、その状態の痛みは軽減されるかもしれませんが、その状態が根本的に癒えることはありません。あなたは、あなたの内面の精神性の世界で、革命を起こさなければならないのです。すなわち、気持ちの上で自分が完全に別人になったと思えるほどに、精神性の変化を促す必要があるのです。そのとき、あなたの心をがんじがらめに縛り付けていた箍(タガ)がはずれて、あなたの内側に眠る潜在能力が目覚めます。あなたの内側から、何かものすごい力が沸き起こってくるのです。あなたは、その内側からの力で癒されるのです。あなたの存在の奥深くにある、何か神秘的な力によって癒されるのです。あなたは、あなたの「いのち」が放つ力によって癒されると言えます。
もう既に議論をしましたが、多くの方にとって、ヒーリングとは、あなたを不快に感じさせている何がしかの症状(例:頭痛)について、何がしかの処置(例:頭痛薬やカイロプラクティック)を受けることで、その症状がなくなることが、ヒーリングである、と意味します。しかし、この見方は、次の段落で指摘している意味において、正しくありません。
既述した「不健康な状態」「健康な状態」を咀嚼いただければ、その一般的に理解されたヒーリングでは、その症状をもたらしている「緊張」が見過ごされており、その「緊張」の更に奥にある、究極的な根本原因たる、「不安」や「恐怖」は、視界にすら入っていません。「不安」や「恐怖」、それを解消することこそが、あなたの心身の健康にとっての鍵といえます。そして、「不安」や「恐怖」を解消するには、あなたがあなた自身の内側の精神性の世界を探索し、あなたの奥に眠る、あなたという存在の本源的力に触れる必要があるのです。
これは自己変革です。あなたは、内面の世界の探索により、これまでに「これが自分だ」と考えていた自己定義が間違いであることが分かり、本当の自分とは、筆舌しがたい大きな存在であることを知るのです。このとき、あなたは、あなたの不安や恐怖を超越し、あなたの内側から沸き起こる力によって、あなたは癒されていきます。これは、さなぎの中から蝶がいずるような、Inside-Outの過程です。外部的な力(例:カイロプラクティック)があなたを癒すのでは無いのです。Outside-Inではなく、Inside-Outなのです。あなたは、あなた自身の力で癒されるのであって、外部的な力は、その補助にしかなり得ないのです。
ヒーリングとは、これまでの自分を捨て去り、本当の自分を知ることで、自分の「いのち」の力を喚起することで、もたらされるものです。自己変革によって、「不安」や「恐怖」を解消することでもたらされるのです。自己変革以外の何かによって、潜在意識下の「恐怖」が解消されることはありません。ヒーリングとは自己変革です。
例を挙げて、なぜ、ヒーリングとは自己変革といえるのか、説明しましょう。例えば、あなたが、幼少期に親から暴力を受けていたとしましょう。このとき、あなたは、気分次第であなたを殴りつける父親を目の当たりにして、自分が殺されるかもしれないという、むごたらしい恐怖が植えつけられます。日本では親から子への体罰が、文化的に容認されていますが、体罰を、子供の視点からみれば、それが子供にものすごいインパクトを与えているのは間違いありません。子供にとっては、自分の身体の何倍ものサイズの大人が、たとえ、軽く平手でたたくぐらいであったとしても、「自分が逃げることのできない」状況に追い込まれた上で、刑(おしおき)が執行されるのです。当然、子供は、無意識の深いレベルでは、自分は親に殺されると感じます。自分の身の回りは脅威に満ちている(世界は安全ではない)という世界観が刷り込みされてしまいます。
そして、あなたは、自分が安全であるためには、親を満足させる必要があることを学習します。親を満足させるために、「いい子」であろうとします。「いい子」であるために、あなたの心の中では、様々な目標が設定されます(例:親の手伝いをする、親のアドヴァイスにはNOといわない、親の指示に従った人生設計をする、等)。大人になっても、あなたは、何か目標をたててそれを達成しなければいけないという衝動にかられます。例えば、いい大学に入って、いい成績をとって、いい企業に入って、いい収入を得て、幸せな家庭を築く。
しかし、あなたが抱える全ての目標が、あなたの望むように達成されることはありません。目標が達成されていない事態について、あなたは過剰に反応します。動機や息切れ、歯軋り、不眠なども経験します。なぜ、あなたが過剰反応するかといえば、このとき、あなたは無意識のうちに、目標が達成が出来ない→親が気分を悪くする→親が自分に暴力を振るい自分を見捨てる→自分は死ぬ、と感じているのです。あなたの潜在意識は、「目標が達成できない」=「親に殺される」と看做すのです。仮にあなたの親が既に他界しても、あなたの潜在意識は、あなたの親を脅威と看做し続けます。ここで説明している心の動きは、全てのあなたの潜在意識下で起きています。
あなたがこのトラウマを解消するのは、簡単なことではありません。なぜなら、トラウマが、あなたの成功願望の源泉になっているからです。あなたの精神構造では、恐怖(親から殺される)→成功願望→日々の努力、というプログラムが出来上がってしまっているのです。あなたにとっては、もし、あなたがこの恐怖を解消してしまっては、成功動機も霧散してしまい、あらゆることにやる気がもてなくなり、何も成し遂げることができなくなる、すなわち、自分が社会的落伍者になるかのように、あなたには感じられます。であるが故に、あなたの意識は、その恐怖の解消に抵抗するのです。
しかし、最終的には、あなたはこの恐怖を解消する必要があります。なぜなら、恐怖によって喚起されたやる気で、あなたが今後もがんばり続けるのであれば、あなたを待っているのは、消耗と疲弊しかないのです。いくら、社会的に成功しても、出世して、大きな家を買い、ヨットをハーバーに所有するような生活をしても、あなたの心の傷は癒えません。成功をもっと、もっとと追い続ける生活を続けるだけで、あなたが心の平和を感じることはありません。
あなたは、恐怖を解消し、「不成功は破滅である。それがこわいから、成功するようにがんばる」のではなく、「それが楽しいから、私はそれをがんばる」というような、ポジティヴな快適さが、あなたを動機づけるような状態を目指すべきなのです。
あなたが、この「親に殺される」という潜在意識下の恐怖を解消するのには、あなたの内面の精神性を変革する必要があります。もっと端的に言うと、自己変革のみによって「恐怖」は解消されるのであって、他の方法では、解消されません。この自己変革において、次の二つの過程が要求されます。
(1) 過去の自分を捨てる−執着している全てのことに対して、その執着を捨てる
潜在意識下の「恐怖」を解消することは、あなたの意識がそれを必要と看做していますので、とても難しい過程になります。あなたは、あなたが必要だと無意識に感じる何かを手放さなければならないのです。あなたが、これまで「正しい」「望ましい」と信じている何かを、手放すのです。この過程が、あなたの自己変革をもたらします。
自分が癒されるためには、これまでの自分を捨てる必要があるのです。これをご理解いただくのに、末期卵巣がんから生還した武藤すみ子さん(発症当時53歳)のコメントをご紹介します。本人が具合が悪くなり、診断がついたときには末期の卵巣がんで、余命数ヶ月と診断がつきました。手術により病巣の摘出はしましたが、抗がん剤はやらずに、丸山ワクチンとMMKヨード、飲料水の大量療法で対応し、その後健康を取り戻しました。以下は、作家の柳原和子氏が、すみ子さんが70歳のときに行ったインタビューです。「がん患者学」(柳原和子著、晶文社)から抜粋しました。
すみ子:「生活習慣もほとんど病気前と変えましたね。病気になる前にはいろいろとやっていたんです。帽子のデザインと制作とか、彫金、フランス語を勉強したり、一日中忙しくやっていたんですけれど、夫の意見で、すべてやめました。なにもしないでのほほんとしていようと。」
たかし(夫):「世の中には原因のない出来事というのはないはずです。がん患者すべてに共通する原因は現在のところ解明されていないとするならば、もしかしたら個体別、個人、個人によって違った原因があるのかもしれません。となると、これ(妻)の生活のどこかに原因が潜んでいたと考えたほうがいい。しかし、人間が自分の生活の隅々までチェックしながら生活するのは不可能でしょう。それなら、とりあえず発症前の生活を全部やめてみたらどうや、と。今までの生活と正反対の暮らしにしたらいい。」
すみ子さんのケースで、鍵になるのは、次のことです。過去と完全に反対の生活をして、その新しい生活が物理的に健康を促進したというよりは、過去と決別することを彼女は受け入れることができた、そのことが彼女の生還の肝となったのです。忙しくしている人というのは、往々にして、ぼーっと何もしないことが苦痛なものです。何もしないと、かえってストレスがたまります。すみ子さんは、何もしなくてぼーっと毎日を過ごしても、いらつかないほどに、彼女は自分の精神性を変えたのです。精神的に彼女は、別人になったのです。それが、彼女の劇的なヒーリングを呼び込みました。
彼女が捨てたものは、「これをしなきゃいけない」という衝動です。その衝動は、エネルギー的には、非常に重く固いものでありますので、彼女の生命力が動くのを妨げてきたのです。それが彼女の癌の遠因であったといえます。その妨害物がなくなったのですから、彼女の奥から治癒力が沸き起こり、癌が治ったわけです。自分の本源的生命力を喚起するには、これまでの自分を捨て去る必要があるのです。
(2)恐怖と向き合うことで、全く新しい自分を得る。
あなたには、その潜在意識下の「恐怖」に向き合うことが要求されます。その「恐怖」に触れて、感じ、体験していくと、当然、あなたは、震えてショック状態になります。最初は涙が止まらないかもしれません。しかし、その反面、あなたの奥底で、その恐怖の影響を受けていない力強い何かが存在するのが、やがて分かります。何度恐怖に打ちのめされても、あなたの奥に、ビクともしない力強い何か不変なものがあるのです。その恐怖が、あなたという存在の根幹を揺るがすものではない、ということを体験を通じて知るのです。上であげた、親からの虐待を受けた例で説明すれば、どんなに親から暴力を振るわれて、どんなに心が傷ついても、どんなに自分が非力に感じられても、あなたの存在の根っこは、全く無傷であることが分かるのです。あなたの存在の奥底に、何からの影響も受けなく、常に純粋で、常に慈悲にとんでいる、大きく両手を広げて何もかもを受け入れようとする深い包容力があります。その力が、あなたの本性、本質、性質であることを感じます。
そうして、本当の自分、自分の存在の大きさを知り、感じることができると、潜在意識の不安・恐怖を克服することができます。これは、大きな自己変革です。あなたは、あなたがこれまでに、感じたことのない自分を体験するのです。喩えていえば、羊に拾われた狼の子供が、羊のように過ごしてきて(草を食べて過ごしてきた)、自分自身を羊であると思い込んできたけれども、ある日、自分が狼であることが分かった。それぐらいの変化を、あなたは体験するのです。
それだけの変化を得るには、上述したとおり、潜在意識に目をむけ、あなたは「恐怖」へと近づいていく必要があります。「恐怖」に近づき「恐怖」を体験し、味わいつくすと、あなたは、その「恐怖」の奥で、あなたの「いのち」の力が存在するのを知るのです。
なぜ、「恐怖」に近づく必要があるかというと、「恐怖」も「いのちの力」もあなたの無意識の領域に存在するのです。あなたの顕在意識からすると、「恐怖」も「いのちの力」も同じ方向に存在しています。これは、喩えれば、トンネルの向こう側に、美しい大自然が広がっているような状況です。あなたは、トンネルが真っ暗なので、トンネルに入るのにしり込みします。しかし、トンネルを通らないことには、大自然にたどりつきません。それと同様に、あなたが「恐怖」から遠ざかろうとするのであれば、あなたは、「いのちの力」からも遠ざかるのです。
ヒーリングとは、自己変革を通じて、潜在意識の不安・恐怖を乗り越えることです。その結果として、あなたは、上記の「安らいだ」状態に入っていきます。これこそが、バーバラ・アン・ブレナンが、「ヒーリングとは悟りの副次効果である」という理由です。私は、「悟り」に移行する過程を「自己変革」と表現しています。そして、自己変革とは、過去の自分を捨て去ることと、恐怖に向き合い、自分の本源的強さを体験することです。
私、加藤が提供するヒーリング・セッションは、あなたが内面の精神世界を探求し、あなたの本源的な力を体験するのを助けるのを目的としています。あなたが内面の旅行で、道を迷わないように、内面にある恐怖に触れたときにその恐怖に打ち負かされないように、その恐怖があなたに再びトラウマを与えないようにし、あなたの安全を保障しながら、自身の「いのち」の力に触れるのをお手伝いします。月日は要しますが、あなたは時間をかけて、少しずつ、徐々に、あなたの「いのち」の力を実際に体験していきます。やがて、あなたは自分自身が無限の存在であり、何も不安や心配をする必要が無いことを確信します。その深い「安らぎ」、それを提供するのが、私が目指しているものです。
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